思い返すと人との広がりに本が関わっていたことに気づかされる。
私は去年、「NPO法人 本の学校」の会員になり、「生涯読書をすすめる会」に参加した。この「生涯読書をすすめる会」は月一の集まりで、集まったときに各自のお気に入りの本を紹介したりする。
そのため自分の本棚から好きな本を探してみると、本棚の奥の奥の隅っこに「宇宙旅行」(小学館)という本があることに気がついた。かなり古く、すっかり忘れていたので、発見が正しいかも知れない。この本は私が小学生のときに親から買ってもらった本だ。紙はすっかり日に焼けて茶色くなり脆い。そして裏表紙裏(表3)には、私が真似て作った貸出カードのポケットが貼ってあり、そこに貸出カードが入っていた。貸出カードの貸出者には友人の名前が書いてあり、友人に貸し出したことが分かる。懐かしい名前だ。
そう、ことの始まりは小学生のとき。先生の推薦で図書委員になった。それまで私は本に興味はなかったが、図書室の貸出と整理を通して本に興味を持ち始め、気がついたら本を好きになっていた。だから自分の持っている本を使って自宅で「図書館ごっこ」をしていた。そんな私によく友人も付き合って本を借りてくれたものだ。楽しかった小学生の記憶が蘇ってきた。
「生涯読書をすすめる会」で一番最初に紹介する本はこれだと思った。それは「宇宙旅行」(小学館)。もう、買うことのできない本だけど、この本には私の大切な思い出が刻まれている。
そして「図書館ごっこ」の話と「宇宙旅行」を紹介した。どうだろう、良かったのか悪かったのか、次回は30分間で自己紹介を兼ねて何か話をしてくださいとなった。少しビックリしたが、もともと仕事でプレゼンテーションが好きだったので引き受けた。しかし、家に帰って冷静に考えると何を話すのがいいのか。ボキャブラリーが少ない私は読書家の前で話せるワケがないと後で気がついた。後の祭りだ。
こうなると開き直るしかない。コンピュータ以外で話せることといったら、そう鳥だ。野鳥の話をしてみよう。幸い写真はいっぱいあるし、ブログも書いてきた。ストーリーのある写真も撮れた。そこで作ったのが絵本風「ぼくはここだよ」だ。これはKeynoteという、PowerPointみたいなアプリを使って作った。
そして「生涯読書をすすめる会」の皆さまは凄い人たちばかりだ。私の作った作品を貶すことはなく、褒め称えてくれた。人は褒められると有頂天になる。私もそうだ。実際に「ぼくはここだよ」を子どもたちの前で話をしたくなった。
そう考えていると、知っている幼稚園からコンピュータの件で手伝ってもらえないかと話があり、休みの日に幼稚園に行ってみた。話の最後に「長井さんの写真は引きつけられるよね」と言われたので、最近は野鳥にはまっていますと野鳥の写真を見せたあとに、「ぼくはここだよ」を先生方にお披露目した。すると、今度の大山でのお泊まり学習で話してくれないかとなった。
湯上がりのほやほやの子どもたちに囲まれて、プロジェクターで「ぼくはここだよ」を披露するとき。
傍若無人に走り回ったり話しかけてくる子どもたちに話を始めた。打って変わってジッと聴き入る子どもたち。私の話が終わると、嵐のように子どもが私の周りに集まり話しかけてくる。私は感動してしまった。私の撮影した写真で子どもたちが聴き入って、そして友だちのように話しかけてくる。
私の小学生のときと、今が「本」でつながった。
遊びの「図書館ごっこ」、趣味の「写真」、そして仕事で鍛えたプレゼンテーション。それを楽しむ子どもたち。時を越えたような気持ちになる。このときの趣味だったのかとさえ思えてくる。
「本」は時間を越えて人をつなげることができる。紙と字の素晴らしさ。私が作った「ぼくはここだよ」は紙の上ではないけれど、それをつなぎ合わせたのは一冊の「本」。やはり本は素晴らしい。本は永遠だ。
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